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さだまさしのCDは、音が小さいか? 後編

ダイナミックレンジという言葉があります。これは小さい音から大きい音までのレベル差を言います。

ダイナミックレンジが広い音楽と狭い音楽があります。クラシックの交響曲、管弦楽曲、協奏曲などはもの凄くダイナミックレンジが広い音楽です。逆にロックンロールは曲の最初から最後までほとんどレベルが一定の音楽ですので、ダイナミックレンジは狭いと言うことになります。どちらが音楽として優秀か、ではありません。念のため。

さだまさしの作品の中で、“風に立つライオン”はダイナミックレンジが最も広い曲のひとつです。冒頭の「突然の手紙には〜」や一番最後の「おめでとう、さよなら」の声の強さ(大きさ)と、最後の方で最も盛り上がっている「風に向かって立つライオンでありたい」の声の強さ(大きさ)は全くの別物であることがお分かりになると思います。

もしもっと大きな音のCDを望まれると、「風に向かって立つライオン〜」のところは最大レベルですから変えられませんが、「突然の手紙には〜」や「おめでとう、さよなら」の部分をミックスでもっと大きくすることになります(つまりダイナミックレンジを狭くする)。「おめでとう、さよなら」と「風に向かって立つライオン〜」では、歌詞の内容や歌の表現が異なります。実際、まさしは「風に向かって立つライオン〜」を叫ぶように歌い、「おめでとう、さよなら」をささやくように歌っています。これらがもし同じ音量で聞こえたら雰囲気もイメージも表現もぶちこわしになってしまいます。

ですから、ロックンロールっぽい音楽では全曲最大限のレベルに近いように出来ますが、表現や説得力が大事なバラードなどは、最大値は高いですが、小さいところは小さいことになります(さすがに小さすぎて聞き取りづらいようなところはミックスで上げていますが・・・)。

以上のことから、ご理解頂けると思いますが、さだまさしのCDは歪みのない音質の良さを保ちながらも、音楽表現、感情表現を大切にして、なおかつ極力聞こえづらいところがないように作っています。

コメント

レベル競争で録音レベルが高いものを聞きなれてしまったせいか、友人や知人と話していると録音レベルが高(音が大き)ければ音が良いと思っている人が多くて驚きます。
私もラジカセで聴いていたときはそう思っていましたが、人から聞いた二次情報に惑わされずに自分の耳と心で冷静に聴いて、やっと録音レベルが高いものが音質が良いわけではないことに気づくことができました。
これに気づくと、音が良いCDはネットでダウンロードなどせずに手元に置いておきたいと思うようになりました。
ネット配信でCDはなくなるのでは?などと言われておりますが、手元に置いておきたいと沢山の人が思う作品は今後もCDやSACDのメディアで発売され、そうでないものはネット配信というような住み分けがされるのではないかと感じております。そういう住み分けがされれば、音楽的にも音質的にも素晴らしい作品を自分が探しやすいという私の希望的観測ですが(笑)

CDの音量についてのお話しなので登場です。え〜〜〜録音担当、鈴木です。

大きな音のCDを聞いた時に感じる代表的な現象。
音が平面的に聞こえる・音が濁る・音が刺激的に聞こえる、等々です。
これは音量を均一化させる録音機材”コンプレッサー”の使いすぎ(かけ過ぎ)で起きる現象です。
何故この様なことが起きるのか、多少無理がありますが判りやすく説明させていただきます。左右スピーカーの間にステージが有ると想像して下さい。CDを再生して再現されるステージでは、音源に近いマイクで録音した音はステージ最前方、音源と遠いマイクで録音した音はステージ奥にいるように聞こえます(これを定位感と言います)。”コンプレッサー”で音量差を圧縮すると最前方の大きな音はそのまま、ステージ奥の音は大きくなり前方に出てきます。感覚的にはステージの奥行きが狭くなったように聞こえます。このため平面的に聞こえるのです。
奥行きのある大きな空間には、音楽のイメージ作り上げる温度感・色彩感などの、旨み成分(と感じる物)を多く含ませることが出来ます。”コンプレッサー”で空間が狭くなると、音源(歌や楽器)の位置関係(定位感)に無理が生じて音が濁り、旨み成分が減ります。

「さだまさし」の音楽を作り上げるのには、奥行きのある大きな空間(ダイナミックレンジ)は、重要な意味を持ちます。

八野さん、ともおさん、こんにちは。

最近のCDのコンプレッサーかけまくりの全編高音圧一辺倒の作品はどうかなって思っていました。
私もDTMをやっているので、作品の仕上げの最終段階でコンプレッサー処理を行います。(WAVES L1やFreeのSoundEngineなどを使って…)ただ、これをかけ過ぎると、全体の音量と共に音圧感が高まるのですが、抑揚が抑えられてしまったり、音のイメージが変わってしまったりします。かといって、さださんの作品がノーマライズ処理だけでなされているわけではないですよね。そのさじ加減が適度なのだろうと…。
嘗てリリースされた「夢供養」とDSDマスタリングされた「夢供養」では後者の方が格段に音圧感もありますが、かといってメリハリがないかというと前者よりもずっとあるんですよね。前半小さめで後半盛り上がる「空蝉」(先日から何度もとりあげてますが)で両者の波形を比較すると後者(DSD)の方が明らかにダイナミックレンジも広く高音圧。後者は作品の本来のイメージとして、ずっとボーカルの艶やかさや残響の余韻まで伝わってきます。
LPレコードとしてでていたものを嘗てCD化されたものに総じて音量が小さめで最近のCDと比べて音圧感が低いものが多いですが、この辺りはマスタリング処理の問題なのでしょうか。
なので、LPレコード盤からCDに焼き直された旧作のものは別として、最初からCDとして制作されたさださんのアルバム、とりわけ最近の鈴江さんのお仕事によるDSDマスタリングを施されたアルバムも含めて、音が小さくて不満だと思ったことは一度もありません。限られたビットをより有効に使いながら、音楽をデジタル化するというのは、録音の段階からミキシング、マスタリングにいたるまでエンジニアのみなさんの正に職人だからこそなせる技なのだと思います。
そしてどういう音作りを求めるかという八野さんのプロデューサーとしての手腕が発揮されるのだと思います。
そういう意味でアルバムが制作に携わる全てのスタッフによる作品であることを、前回のアレンジャーやプレイヤーのみなさんの職人魂に加えて、今回のレコーディング・エンジニアのみなさんの職人魂に改めて実感することができます。
こうした拘り抜いた仕事の積み重ねとして毎回、素晴らしいアルバムが作られている訳なんですよね。
アルバムに関わるみなさんに心から敬意を表したいです。
みなさん、ありがとうございます。

オーディオ初心者さん、コメントありがとうございました。

そうですね。
MP-3全盛の時代といっても、やはり歌や音楽の微妙なニュアンスはCDにはかなわないですね。SACDは更に素晴らしいですし・・・。

リスナーの皆様には、気に入った音楽は、どなたのものであってもCDパッケージを是非お買い上げ頂きたいと、切に、切に願っています。この理由はもしかしたら、後日書くかもしれませんが・・・。

鈴木智雄さん、具体的なコメントをありがとうございました。

Jun.さん、コメントありがとうございました。

コンプレッサーは必要悪ですね。

「夢供養」の件は(も)、おっしゃる通りだと思いますよ。

マスタリング・エンジニアの酒サケさんのセンスと力量も重要ですし、その前段階での鈴木智雄さんの経験とセンスも重要です。

八野さん、こんにちは。

> 気に入った音楽は、どなたのものであってもCDパッケージを是非お買い上げ頂きたい

これは、全く同感です。
さださんのアルバムは、毎回必ず買っています。LPのものも全てCDで買い直しましたし。他のプレイヤーについても素敵だな!感動したな!っていうCDは必ず買います。
もちろん、レンタルでCD借りて、聴いた上でリッピングすることもありますが
惚れ込んだアルバムは必ず買っています。
そのことが、そのアーティストにまたさらに次なる素敵なアルバムを制作してもらう微々たる応援になるのではと思うと同時に、買うことによって、自分にとっての本当に愛着のあるものになると思うからです。

また、さださんのアルバムの特徴である膨大な量の読み甲斐のある中身の濃いライナーノーツや、美しいジャケット写真をはじめとるする、パッケージデザイン。最近のさださんのアルバムでも採用されているカートンボックス。これらはレンタルCDでは手に入れることが出来ませんから。

嘗て、「夢供養」のLPだったかで、さださん編集の新聞まで着いてたことがありましたよね。私たちの世代って、「おまけ」ってすごく心動かされるものがあるんですよね。「OSSAN」ってメーカーの車の宣伝とか載ってたし、架空のテレビ欄まで!
買って、お徳だなあ、って感動しましたもん。

MP3プレイヤーはあの曲が聴きたいと思ったときに、いつでもすぐに曲を聴けるという意味で素晴らしいし、否定するつもりはありません。MP3のおかげで、最近のCDばかりでなく、幅広く自分のライブラリを活用するようになりましたから。
CDとネット配信音楽の両者がうまく共存共栄できるといいなと思う今日この頃です。

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