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1枚のCDが世に出るまで 7

12.<マスタリング> 本来マスタリングは「工場に送るマスター(数年前まではテープでしたが、最近ではディスク)を作ること」です。当初は「最終的に各曲の音量を揃え、曲順通りに並べ、曲間を調整する編集作業」という認識が一般的だったかもしれません。しかし近年では、少しでも派手に聞かせようとレベル競争になっている傾向があります(オン・エアーされた時に他の人の曲よりも録音レベルが大きいと派手に聞こえ、インパクトがありますから、売れ易いと判断してのことだと思います)。

何かをやればそれには犠牲が伴うことがあります。レコーディングやマスタリングで録音レベルを上げる為にコンプレッサー(大きい音のみを自動的に小さくする機材)を使えば使うほど、歌や音楽がクレッシェンドしているのにクレッシェンドしているようには聞こえなくなる可能性がありますし、決定的な部分ではメインである歌に伸びやかさが無くなります。つまり歌の魅力を減じる方向に向かいます。そして何より感動的には聞こえなくなります。またコンプレッサーをかけ(すぎ)ると僕にはダイナミックレンジ(大きい音と小さい音の差)だけではなく周波数レンジ(音域の高い音から低い音の差)さえも狭くなったように聞こえますので、音質的にも酷いものになっていくように聞こえます。だからといってマスタリングで音圧(レベル)を上げる必要が無いとは思ってはいません。ですからマスタリングは二律背反の作業であり、苦しみが伴う場合があります。

マスタリングは、最終的な音量、音質調整の場であると同時に、僕にとっては、ミックス・ダウン後に、万が一何かひと味足りないと思った時に、追加でスパイスをかける最後のチャンスであることも事実です。まず全部の曲を一番ドラマティックにダイナミックに聞かせたい曲から淡々とした曲へと、また温度を一番高く聞こえさせたい曲から一番低く聞かせたい曲へと性格分けします。そして1曲1曲他の曲と比べながら(時には前アルバムとも聴き比べます)客観的により細かく音作りをします。そうすることによって、そのアルバムの中におけるそれぞれの曲の特徴を出し、それぞれの曲がそれぞれにふさわしい役を演じることが出来るように考えます。そして、それらの曲を決められた曲順通りに、各曲の性格を考慮しながら次の曲が出るタイミングを調整して並べてマスターを作ります。後日、上記のようにマスタリングして作られたディスクがCDのプレス工場に送られます。

ここ10年程一緒にやっているマスタリング・エンジニアの鈴江真智子さんは、音楽的な、音質的な満足感を損なうこと無く、レベルを上げられる希有なエンジニアです。お願いして最終的な各曲の色合い、温度感を希望通りに調整してもらいます。その結果、ミックス・ダウンした時以上の感動を得られるように持って行ってくれます。僕としてはこうあるべきという各曲のサウンド・イメージだけではなく、「フリーフライト・レーベルの音」のイメージを持ってマスタリングに臨んでいます。それを実現させるためにも鈴木智雄さんと並んで鈴江さんの存在は大きいのです。

以上のようにマスタリングを含めた一連のレコーディングの流れは「ヴィジョンの具現化」であり、より具体的には「頭の中で完成している音楽へ実際の音楽を近づけること」だと言えます。

コメント

八野さん、こんばんは!ミックスダウンまで来たら、もうあと少しと思ってましたが、マスタリングも、大変な作業なのですね。よく言われるようですが、さださんの曲は他のアーティストの作品より全体的なレベルは低いようですが、オーケストラの演奏ほどではないですが、その曲の中での強弱を大切にしてみえるのですね。「フリーフライト・レーベルの音」のイメージというのがちゃんとあるのですね。

おめめさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

例えばロックンロールのように曲の最初から最後まで音量が一定の音楽なら録音レベル、マスタリング・レベルは高く出来ます。
その逆に「風に立つライオン」は、ささやくような「突然の手紙には〜」から始まり、「風に向かって立つライオンでありたい」でピークを迎え、その後「おめでとう さよなら」で再びささやくように終わります(その後のハミングは別にして)。例えばその3カ所(というか全ての部分)を同じ音量、同じ表現で歌っていいのなら、これまた大きな音量に出来ます。ただそうなると「突然の手紙には」、「風に向かって立つ」、「おめでとう さよなら」全てが歌もオケもシャウトするような音楽になり、デリカシーのないものになるでしょうね。
表現と音量の両立は本当に難しいものです。

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