このアルバムを企画してから数年になります。その間、じわじわと「おじさんバンドブーム」が起こり、GS(グループ・サウンズ)の再評価と共に、当時活躍された方々が表立った活動を再開しつつあります。
最初に数十曲を荒選びして以来、スタッフやチキガリのメンバーと何度も検討を重ねてきました。その結果、涙を飲んで今回は見送った曲が何曲もあります。
その理由は様々です。
GSの方々は当時20歳そこそこだったのですが、その年齢だからこそ似合った曲は沢山あり、彼らが熟年になってから歌ってもその曲のオリジナル歌手だから何ら不自然さは感じません。ところがチキガリは現在平均年齢が40代に入っています。
また当時ザ・タイガースと共に抜群の人気を誇ったのはザ・テンプターズです。何故彼らの曲が入ってないのかご不満の方もあることでしょう。彼らもヒット曲は多いのですが、その中で現在のチキガリが歌わせていただいても年齢的不自然さがないのは、おそらく「エメラルドの伝説」でしょう。しかしこの歌の冒頭の歌詞は「湖にきみは身を投げた」です。自殺者の数が急増している現在、オリジナルのザ・テンプターズの皆さんが歌うのとは異なり、平均年齢が40代で大人の良識を問われる彼らが歌うにはわずかに抵抗感がありました(個人的にはとても素晴らしい曲だと思っています)。
そしてチキガリの6人のリード・ヴォーカルの曲数のバランスと、それぞれのヴォーカリストにフィットするかどうかも大きなポイントでした。
また、例えばフォーセインツの「小さな日記」や「希望」なども当初候補に挙げましたが、彼らはGSというよりも「カレッジ・ポップス」でしたので今回は見送りました。余談ですが、そのフォーセインツのリーダーで、ヴォーカルを担当されていたのは上原徹さん。上原さんはその後、フジテレビに入社され「夜のヒットスタジオ」などのディレクターをなさり、現在はフジパシフィック音楽出版の社長という重責を担いながらもさだまさしの映像作品を担当してくださっています(つまり近年のさだまさしのDVDは、上原さんが映像ディレクター、僕が音楽ディレクターという訳です)。
このように涙を飲んで見送った曲の何と多いことでしょう。僕としては何曲でも使わせて頂きたかったというのが本音です。今回のレコーディングの前も後も、GS作品を生み出された方々、GSの方々、そしてGS関係者の方々に対する尊敬の気持ちでいっぱいです。当時のリスナーの人たちを喜ばせていただき、後進を育てていただき、そして今回楽曲を使わせていただき、本当にありがとうございました。
エンジニアの鈴木智雄さん、遠藤等さん、谷健太さん、アシスタント・エンジニアの石山晶規さん、西山潔さん、そしてマスタリング・エンジニアの鈴江真智子さんを始めレコーディング関係者の皆さん、ありがとうございました。皆さんの協力と努力があったからこそ、このアルバムが出来上がりました。また次も宜しくお願い致します。そしてレコーディング機材を提供してくださったAccuphaseさん、Acoustic Reviveさんにも感謝申し上げます。
チキガリのメンバー共々ギリギリまで選曲その他の練り直しをしました。それゆえ時間のあまりない中でレコーディングに突入することになってしまいました。チキガリのメンバーの頑張り無しにはこの企画や作品自体が成立しませんでした。レコーディングの回数を重ねる毎に、アルバムの数を重ねる毎にチキガリは進化し続け、深化し続けています。彼らは「音楽」を愛しているからこそ成長し続けることが出来ているのだと思います。このアルバム「タイムスリップ」は彼らのアルバムの中で、音楽的な観点から見ても、オーディオ的な観点から見ても、間違いなく今までで最高のものになったと思います。
当時GSをお聴きになっていらした方々の「思い」や「気持ち」が「あの頃」にタイムスリップ出来て、楽しんで頂けるのなら、そしてGSを知らない世代の方々にも楽しんで頂けるのなら幸いです。そして前にも書きました通り、様々な世代の方々がこの「タイムスリップ」がきっかけのひとつになって、お互いに理解を深めることが出来、今まで以上に会話の場が持てるなら、こんなに嬉しいことはありません。