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2009年11月30日

影響を受けたCD その114

マーラー/交響曲第5番
ジェイムズ・デプリースト:指揮/ロンドン交響楽団
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1202738

ここ30年位、日本ではマーラー作品が人気ですが、その中で交響曲第5番は筆頭かもしれません。特に第4楽章「アダージェット」が映画「ベニスに死す」に使われたことが、この曲の知名度を上げるきっかけのひとつだったのかもしれません。
後に彼の妻となるアルマを想って書いたと言われるこの第4楽章の美しさは尋常ではありません。

人気曲ゆえ名演は数多くあると思いますが、ここ2年ほどはこのデプリースト盤をCDトレイに載せることが多くなりました。
デプリーストはこのCDで初めて聴きましたので(残念ながら都響の常任指揮者時代に聴いたことはありませんでした)、たいそうなことは書けませんが、細部まで気を遣い、克明に、しかも丁寧に描くタイプの指揮者だと思います。
また、どうやらドイツ・グラモフォンのスタッフがレコーディングしたらしく、音質も良好です。しかもスタジオはあのアビーロードの1st、オケは天下のロンドン交響楽団。悪いはずがありません。
ここ数年は老舗の廉価レーベル「ナクソス」(NAXOS)の躍進は素晴らしく、時々とんでもなく素晴らしいCDがリリースされますので、個人的に注目しています。

2009年11月26日

判断の難しさ

今年も残すこと1ヶ月余りとなりました。
僕の周りでも今年も様々なことが起き、通り過ぎ、またあるものは今も心の中に留まったままでいます。
「事件」と言ってもいいものもいくつもありました。
哀しいもの、辛いもの、嬉しいもの、印象的なものなど様々です。
これはきっと誰しも同じ事でしょう。

今年後半のそんな事件のひとつがオーディオに関するものでした。
今年に入ってから自室の音が、大きく分けて、4段階にグレード・アップして行きました。その全てがAcoustic Reviveさんの製品によるものです。

最初は「エアー・フローティング・ボードRAF-48」による、主にレンジ感と立体感の拡大でした。
次は「電源タップ(RTP-6ultimate、RTP-4)」、「電源タップ用クォーツアンダーボードTB-38」、「スピーカー用クォーツアンダーボードRST-38」による、主に圧倒的な透明感、誇張感の無さ、リアリティの増大でした。
その次は「アコースティック・コンディショナーRWL-3」による、主に音像定位の確かさ、周波数特性の正常化、音場空間の拡がりでした。
最後は「エアー・フローティング・ボードRAF-48」の中に、水晶粒子を入れたことによる、主に透明感、立体感、リアリティの増大でした。

こうしてみると、Acoustic Reviveさんの音作りの方向性が全くぶれてないことが改めて分かります。オーディオ・メーカーは数多くありますが、そのほとんどの製品は何かが良くなると、別の何かが悪くなるというものに思えます。
個人的には、オーディオに限らず「本当に優れたもの」は、一見二律背反のものが見事に並び立ったもののように思えます。
例えば、人間でも優しさと厳しさの両面を持ってないと、物事を旨く遂行出来ませんし、魅力的だとも思えません。
オーディオでも、「音像と音場」、「柔らかさとシャープさ」、「立ち上がりと立ち下がり」など、様々な一見二律背反のものがいくつもありますが、Acoustic Reviveさんの製品は、その二律背反のものを見事に並び立たせてくれます。

そういう風に並び立たせてくれると、今まで聴いてきた音楽が、ある意味で「全く別の音楽」に変貌します。
例えば、今まで生真面目一方の演奏が、実はとても血が通ったものであると分かったり、テクニック一方やりだと思ったものが実は情感溢れたものであることが分かったり、ひとつの旋律を実はとても多くの楽器がユニゾンで演奏しているのが分かったり、ミュージシャンばかりでなくプロデューサーやエンジニアたちが何を目指していたのかが分かったり。歌にしても身体の使い方や様々なテクニックと共に、様々な表現にも気付かされました。
これらは、「今まではそういうことに気付かなかった」という意味ではなく、更に凄いものであることが分かったという意味です。

これにより、CDを聴いて、すぐさま分かったようなつもりになってしまうことの危険性を改めて感じました。オーディオ・システムが変わると音楽(表現)までもが変貌してしまうという怖さです。
Acoustic Reviveの石黒さんに感謝すると共に、幾多のCDやその制作者たちにも感謝しないではいられない今日この頃です。

2009年11月23日

“Blend”CD評

チキガリのニュー・アルバム“Blend”のCD評を、音楽評論家の富澤一誠さんが書いてくださっています。
音楽之友社さんから出版されている月刊「Stereo」というオーディオ雑誌の12月号(11/19発売号)229ページ目です。

きちんと評価してくださっていてとてもありがたい記事です。
富澤一誠さん、そして関係者の皆さん、どうもありがとうございました。

2009年11月21日

影響を受けたCD その113

ヨーヨー・マ・プレイズ・エンニオ・モリコーネ
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2781181

あの映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネとチェリストのヨー・ヨー・マとがコラボレートして作り上げた名作で、近年最も気に入っているCDの1枚。
音楽とは何か、歌う(演奏する)とは何か、作るとは何かを教えてくれる作品であり、美の宝庫でもあります。
演奏も録音もかなりのものですが、何と言っても「ガブリエルのオーボエ」、「ニューシネマ・パラダイス」、「レディ・カリフ」など名曲揃いなので、何度聴いても心が洗われ、感動させられます。
僕のオススメCDのナンバー・ワンかもしれません。
上記のURLのものは最近、廉価盤として再発されたものですので、お買い得です。
尚、輸入CD、輸入SACDハイブリッド、国内SACDハイブリッドにはボーナス・トラック2曲は収録されてはいません。

2009年11月16日

「カバー」の難しさ

今回のチキガリのアルバム「Blend」にも多くのカバー曲が収録されています。
「カバー」ということは既にある作品を歌う訳ですから、制作的には難しいことなど何もないと思われるかもしれません。しかし実際にやってみると、それがとんでもない間違いだと気付かされます。

まずカバーするに際し、その作品がジャスラックなどの著作権管理団体に登録されているかどうかが問題になります。登録されていれば基本的にカバーはOKということになります。しかし中には管理楽曲ではあっても、ステージなどで歌うことは可能でも録音は不可、という曲もありますので注意が必要です。

そして何より、歌詞やメロディを間違える訳にはいきません。ところが意外にこれが難しいのです。
外国曲の場合、問題になることのひとつに「歌詞」の問題があります。
国内制作のJ-Popの場合、そのほとんどのCDにはブックレットに歌詞を載せていると思います。ところが洋楽の場合、輸入盤には歌詞を載せていないのは当たり前です(歌詞を載せると楽譜ビジネスに影響が出るためと聞いたことがありますが、真偽の程は分かりません)。
例えば、今回カバーさせていただいた「Any Way You Want It」ですが、日本盤には日本のレコード会社が独自に歌詞を付けています。歌詞はアーティスト・サイドから提供されるのではなく、日本でどなたかが聴き取って作成することになります。実はこれが最大の問題になるのです。その「Any Way〜」には調べた限りにおいて、部分的に複数の歌詞が存在することが今回分かりました。何度も何度も繰り返し聴いて、どちらが正しいのか確認するようにしても、速すぎたり、歌が小さかったりすると分かりません。そこでレコード会社に連絡を取ったところ、何と本国にまで問い合わせてくださいました。こちらとしては何も責めているのではなく、とても感謝しています。日本のレコード会社が外国作品の歌詞を載せることはファン・サービスの一環でおやりになっていることが分かってますので、その心遣いや労力に対して非難するのは個人的にはするべきではないと思っています。
こういう問題が「Any Way〜」だけでなく、「Thriller」にも、「Scarborough Fair/Canticle」にもありました。

ですから、もしかするとアルバム「Blend」を手にした方が、ご自分の持っているオリジナルCDや楽譜などと一部の歌詞が異なっている可能性があります。が、これはこちらとしては八方に手を尽くし(入手が可能なあらゆるものを調べ、歌入れの時点でハッキリしないものは複数のテイクを録ったりしたこともありました)、最終的にそうするしかないところに行き当たった結果だと認識して戴けると助かります。

尚、「Scarborough Fair」は本来イギリスの伝承歌ですが、サイモン&ガーファンクルは全く別の歌詞とメロディを「Scarborough Fair」の中に「Canticle」として入れ込んでいます。今回はそのS&Gのヴァージョンのカバーですので、タイトルには「Canticle」が付きますし、曲のクレジットにもS&Gの名前を入れています。これに関して疑問を感じる方もあろうかと思い、追記しました。

2009年11月13日

実体感と立体感 更なる進化!

先日、エンジニアの鈴木智雄さんが「水晶粒子」を4kg分けてくださいました。
その前に鈴木さんはご自分で、直接Acoustic Reviveの石黒さんから「水晶粒子」を分けてもらったものを使って、エアー・フローティング・ボード「RAF-48」の中に敷き詰め、劇的に音質が向上したそうです。
そして僕にも試して欲しいとのことで、送ってくださいました。
そんな経緯があって、拙宅でも先日の日曜日に休みが取れたためチャレンジしました。

鈴木智雄さんからお聞きした通りの手順で作業を進め、RAF-48の中に水晶粒子を敷き詰め、何度かトップボードの高さを調整するためにチューブの空気の出し入れを繰り返しました。

最初に空気を抜いた状態で試聴。水晶粒子を敷き詰める前との違いをまず感じたのは圧倒的な実体感でした。オーケストラの弦楽器や金管楽器が、ある時には渋さを増し、またある時には輝きを増しており、ダイナミック・レンジが拡大されたように聞こえます。全体的な音の特徴は、そのストレスの無さにあると思います。
そして、その後、いよいよチューブに空気を入れました。そして試聴。
「うわっ! 凄い立体感」。思わず口から言葉が出てしまいました。
近くにある楽器から遠くにある楽器への距離が伸び、下方にある楽器から上方にある楽器への隔たりも増えています。
そうして、「音」にまとわりついている不純物が取り払われ、限りなくピュアになり、高低や強弱のストレスが無い、「音が響き渡る空間」が圧倒的に広く、空間的なストレスも無い、というところに辿り着きました。音量的、空間的、表現的なダイナミック・レンジが圧倒的に拡がったということです。
オーディオ・システムでCDを聴いているのではなく、そこで生の音楽が鳴っているように感じますので、益々音楽を聴くのが楽しくなりました。

最後になりましたが、石黒さん、鈴木さん、どうもありがとうございました。

2009年11月11日

写真展「ランデブー」

今日はNHKさんとの「みんなのうた“風がきれい”」の打ち合わせの後、新宿に移動して、「ランデブー」と題された榎並悦子さんの写真展に行ってきました(現在はまさしのポートレートに変わってしまっていますが、元々まさしのアルバム「自分症候群」のジャケットは彼女が撮った風景写真でした)。

今回は数年かけてパリを、パリの恋人たちをモノクロで撮ったもののようです。
プロは数多くシャッターを切ることは間違いないと思いますが、それにしてもそのシャッター・チャンスの素晴らしさには何度もうならされました。
どの写真もこれ以上ない構図とタイミングで、驚きと感動の連続でした。
個人的にはアンリ・カルティエ=ブレッソン「決定的瞬間」のイメージに近いものを感じて、楽しみながら見せていただきました。

今月19日まで新宿三井ビル1階にある「エプサイトギャラリー2」で開催されていますので、興味のある方は是非お立ち寄りください。
http://www.epson.jp/epsite/
尚、この写真展に使用された写真の1枚は、「アサヒカメラ11月号(現在書店に並んでいます)」の表紙にもなっています。

2009年11月10日

憧れの楽器 9. ヤマハ「QX3」、AKAI「S3000XL」、Young Chang「K2000RJ」「MP-1」

この最終回は実際にかなりハードに使い込んでいた楽器たちです。

先にヤマハの「DX7」のところで「シーケンサー」のことに触れましたが、それがヤマハの「QX3」(ですからこれは正確には楽器ではありません)。これは自分で実際に弾いたものを「音」として記憶するのではなく、コンピューターの「データ」として記憶させる機械です。勿論、自分で弾かない(弾けない)場合は、「打ち込み」と呼ばれるようにキーボードの鍵盤や「QX3」のキーを使って「演奏データ」を作成することも可能です。
この「QX3」には16のトラックがありますので、最大で16の楽器に自動演奏をさせることが出来ます。したがってこの機能を使うことで、たったひとりであたかもオーケストラの演奏をするようなことが可能になる訳です。

AKAIの「S3000XL」は「サンプラー」と呼ばれる楽器で、自分でサンプリングした音を鳴らすことも出来ますが、僕の場合、市販の「サンプリングCD」と呼ばれるものを使っていました。実際に使っていたソフトで代表的なものは、初代ウェザー・リポートのメンバーだった、チェコ出身のミロスラフ・ヴィトウスが作った「オーケストラ・ミニ」というもの。これには、あのチェコ・フィルハーモニー管弦楽団をサンプリングした音(弦、木管、金管etc.)が入っています。ですから、このソフトを使うと、弦の音に定評があった「チェコ・フィル」と共演出来るのです。

Young Chang「K2000RJ」もサンプラーですが、内蔵されたプリセットの音色や追加で取り付けるオーケストラの音色が出色の出来で、特にハープ、ティンパニ、金管楽器は本物そのものです。

そして「MP-1」はグランド・ピアノをステレオ・サンプリングした、発売当時としては非常に優れたプリセット音源。

1996年にNHK-BSでオン・エアーした「さだまさし 長江の詩」の音楽は、これらの楽器をメインに使用して作りました。

2009年11月07日

憧れの楽器 8. 「スタインウェイ」

下手くそですがピアノを弾くのは好きです。
世の中には自分が「上手くなった」と錯覚させてくれるピアノが存在します。
例えば鍵盤の戻りが速いと連打するのが楽になりますし、微妙なタッチをそのまま表現してくれるとひとつひとつの音に様々なニュアンスを込めることが容易になります。しかも鍵盤のタッチは重すぎず、軽すぎず。こうなると自分の手と鍵盤が一体化しているように感じられます。あたかも自分が「上手くなった」ように勘違いしてしまいます。

このような錯覚をさせてくれるピアノは、よく使わせて頂いているスタジオに置いてあるスタインウェイのグランド・ピアノ(勿論フルコン)です。
このピアノを気に入っているので、必然的にそのスタジオでレコーディングすることが多くなります。この十数年のさだまさしのCDに於けるピアノの音のほとんどは、この楽器から出ているものです。
もう10年以上前になりますが、スタジオの営業スタッフに「あのスタインウェイを売って!」と冗談半分で言いました。帰ってきた答えは「すみません。スタジオの“顔”ですので無理です」とのことでした(当たり前ですが・・・)。今でも一番憧れている楽器のひとつです。

2009年11月03日

憧れの楽器 7. 大ベスト・セラー「DX7」

1983年に音楽界の巨人「YAMAHA」が発売した画期的なシンセサイザーが「DX7」。MIDI規格に対応した当時の最も先進的なシンセサイザーで、これで作ったエレクトリック・ピアノのサウンドは「DXエレピ」と呼ばれ一世を風靡しました(やがてこのサウンドがFender Rhodesを駆逐するようになります)。

当然すぐさま僕も購入し、その世界にはまり、自分の音楽活動で使い倒しました。
画期的だったことのひとつは、専用のカートリッジ式のRAMが用意されていて、そこに自分で作った「音色」を入れ、そのRAMを持ち歩けば他のDX7でも自分で作ったサウンドを再現出来たことです。中身は完全にコンピューターですね。また当時MIDI規格が確立されたことが非常に大きく、楽器同士をつなぐことによって、複数の音色を同時に出すことがいとも簡単になり、シーケンサーと呼ばれる一種のコンピューターを使って自動演奏させることも出来るようになり、演奏の幅が飛躍的に拡がりました。

後年、この楽器を使わなくなって手放したのですが、その手放したDX7は「彩風」がレコーディングに使っていました(僕が作った「Y.H E.Piano」という音色を彼らは気に入っていたようです)。
勿論、「DX7」は特に1980年代のさだまさしのレコーディングやコンサートでも大活躍しています。

2009年11月01日

憧れの楽器 6. 「Prophet-5」

“Prophet-5”とはシーケンシャル・サーキット社が作った、1970年代末から1980年代に大活躍したシンセサイザー。
自分で音を作って、それを40種類(後期は120種類)メモリー出来るシンセサイザーで、同時発音数が5つであるため、名前に「5」が付きました。
この「Prophet-5」は可搬性も良く、音質も良く、しかも「作った音色」を記憶出来ることから、爆発的に世のミュージシャンたちに支持されましたが、それでも大ベストセラーとはならなかったのは、その価格のためだったと思います(当時の日本円で170〜180万円)。ちなみに僕の大好きなウェザー・リポートのリーダーだった故・ジョー・ザヴィヌルが弾くProphet-5によるストリングスは幻想的かつ素晴らしいサウンドで、レコードやコンサートでうっとりしながら聴き入ったものでした。

1980年代に入った頃、たまたま中学の同級生と帰りの電車が一緒になりました(中学時代はその人も僕もバレー部でした)。お互いの情報交換をしていたら、何とその人は「Korg(コルグ)」に勤務しているとのことでした。
僕がシンセサイザーに興味があることを知って、「どんな楽器を作ったらいいと思う?」と聞いてきました。僕は即座に「オシレーターがふたつあって、自分で自由に音を作ることが出来、同時発音数は6つ以上、メモリー数は30以上」などと、好き勝手なことを言いました。その1年後、コルグから「Poly-6」という画期的なシンセサイザーが発売されました。勿論、僕が言ったからではなく、時代のトレンドを読んで開発を進めていたからでしょう。そして後にその後継機種「Poly-61」をアレンジャーの渡辺俊幸さんと僕は購入することになります。

「Prophet-5」を作ったシーケンシャル・サーキット社は数年後に廉価版の「Prophet-600」を作り、渡辺俊幸さんと僕は更にその「Prophet-600」を購入するに至りました。Prophetの輸入代理店のモリダイラ楽器さんに行っていた時、まさしから電話が入りました(当時、モリダイラ楽器さんは「白鳥座」のサポートをしてくださっていたので、会社ぐるみのお付き合いがありました)。「曲が出来上がったよ」とまさしが言って、その場で電話で聴かせてもらったのが「それぞれの旅」でした。
言うまでもなく「Prophet-5」は1980年代のさだまさしのレコーディングでも大活躍しています。