予感 最後に
こうやって書いてきてみると案外収録に使った日にちが少ないように感じるかもしれませんが(もしかすると書いてない日にちもあるかもしれません)、この他にも膨大な時間を曲作りだけでなく、出来上がったの詞曲のチェック、本番の歌入れの数日前に実際にマイクの前で歌いながらやる歌詞とメロディのマッチング具合の確認、各種エディット、ミックス・ダウンなどに費やしていますので、毎日朝から深夜までの作業が続きました。
まさしを始め、あのような状況の中で実に皆よく最後まで頑張ったものだと思います。
個人的には作品面、音楽面、音質面へのこだわりはいつも通りでしたが、特に今回はビジュアル(ブックレット)面でのこだわりが2つありました。
ひとつはギターのクレジットをするに際して、いつものように「Acoustic Guitar」などとするだけではなく、楽器のモデル名、弦のモデル名まで入れました。
ひとつのテイクを録り終える毎に、楽器担当の小松クンに確認して資料を作りました。時折、まさしから「コンサートをやっていて最前列に若い男の子がいると、俺を見るよりもギターを弾く指を見ているんだよね」と聞くことがあります。ギターを愛する人たちがある程度以上いらっしゃることを考え、今回のようにギターにこだわったアルバムでは上記のようなクレジットをする方が良いと思い、我儘を通させてもらいました。
もうひとつは「色」です。
お気づきの方は多いと思いますが、今回のアルバムには全曲の歌詞に「色」を入れ込んでいます。
最初に「何もなかった」と「つくだ煮の小魚」(詩は井伏鱒二さん)の2曲が出来上がりました。「何もなかった」の「紅」が印象的でしたので、まさしと一緒にこもっていたブースでそういう話をすると、「今回のアルバムでは全曲に色を入れようか?」とまさしが言いました。「是非そうしましょう」と応えた瞬間、ふたりで顔を見合わせました。そうです、何十年も前から既に存在する井伏先生の名作「つくだ煮の小魚」はどうだったかに思い至ったのです。
すぐさまふたりで確認すると、何と「あめ色」と書いてあります。
これは予定調和というか、運命みたいだ、という話になりました。
後日、「色」がひとつの隠しテーマのようなものである今回のアルバムには、ビジュアル面でそれを暗示するように各曲のページをその色のイメージにするようレコード会社のスタッフにお願いしました(各楽曲のミュージシャン、使用楽器などのクレジットを表記した資料に確認のために各曲に入れた色の名前も入れてレコード会社に渡していました)。ちなみに、おぐらひろかずさんの「予感」というタイトルの絵を使わせて戴くことにこだわったのは、まさし本人です。
今回のアルバムでも素晴らしいアレンジをしてくださった渡辺俊幸さんだけでなく、日頃からギターや歌をどのようにして良い音で録るか、どうしたらリアリティのある音が録れるかを考えてもらい、試行錯誤を繰り返してもらっているレコーディング・エンジニアの鈴木智雄さん、遠藤 等さん、マスタリング・エンジニアの鈴江真智子さん、前代未聞のあれだけ大変なエディットを毎日深夜まで一緒にやってくれたアシスタント・エンジニアの西山 潔さんに随分と助けてもらいました。
また、それぞれの曲のまさしのギターを録る前に、楽器担当の弊社小松一英クンから「どんな音のイメージのギターがいいですか?」と聞かれ、そのイメージを伝えるとすぐさま、その曲のイメージに合いそうなギターや弦を中心に用意してくれました。彼の助け無しには今回のアルバムのレコーディングはあり得ませんでした。
そして特に今回、CDを聴いて戴くと、目の前でギターが演奏され、歌が歌われているようにお感じになると思います。これはエンジニアの皆さんの日頃の努力だけでなく、機材を提供してくださったAcoustic Reviveの石黒 謙さんのお陰でもあります。
お陰様で今回のアルバム「予感」は一生忘れることの出来ないものになりました。
関係者の皆さん、ありがとうございました。
このアルバムを聴いてくださった方々に、この「予感」が愛されることを願ってやみません。