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予感 1

ひとつ前の「ビートルズとベルリン・フィル」は、アルバム「予感」に対する僕にとっての総論のようなものですが、これからは各曲について少し触れたいと思います。
レコーディングに於ける様々な細かいことをお知りになりたくない場合は、どうぞパスしてください。

“片恋”
「片恋」と聞いて思い出すのはツルゲーネフでしょうか、それとも北原白秋でしょうか。僕は不勉強にしてどちらもよく知りません。恋愛に限らず「人を想う」基本は「片恋」であるように思っていますし、楽曲の内容ばかりでなくタイトルにも惹かれました。
この曲が出来上がりつつある時、まさしに聴かせてもらって、膝を叩きました。
この曲こそがまさしと僕にとって今回のアルバムに欲しかったものであり、これからも歌い継がれるであろう作品に思えたからです。
当初はベイシックのアルペジオを弾くギターをガット・ギターで録音しましたが(3月15日)、4月10日にスチール弦のトゥリー・オブ・ライフ(Martin D-45 DX)で録り直しました。
結果的に大成功だったと思います。
尚、ガット・ギターのリード・フレーズもまさし自身が弾き、チェロは堀沢真己さんにお願いしました。
歌入れは4月9、12、13日。そしてミックス・ダウンは4月24、25日。
普通はサビ前にメロディがいったん途切れるものですが、この曲はそういう構造にはなってはいません。特にその近辺をいかに美しいものにするかが、まさしや僕の歌入れやエディット時の最大の関心事でした。
タイトルの通り、より滑らかでピュアで美しいものを目指してこの曲は何度も録り直しました。

“その橋を渡る時”
「賽は投げられた」という言葉と共に有名なルビコン川をモチーフにして曲を作りました。
普通だとまさしがギターを弾きそうもない曲ですし、何よりも彼のレコーディング史上初めて彼がエレキ・ギター(Rain Song JZ1000)を弾いています(3月8、9、11日、4月13日)。
パーカッションは例によって、まさしがスタジオの中に入り、スティックを手にうろうろしながら様々なものを叩き、まさしや僕らが気に入った音に出会うと、すぐさま録音して行きました。それらを組み合わせてパターンを作って行きました。
クロマチック・ハープ(ハーモニカ)を西脇辰弥さんに、アコースティック・ギターのリードを松原正樹さんに、ウッド・ベースを一本茂樹さんにお願いしました。
歌入れは4月5、15日。そしてミックス・ダウンは4月25日。

“何もなかった”
実体感があるような無いような不思議でありながら、意味深い作品のひとつでしょう。
今回だけでなく近年のレコーディングで大活躍している「トゥリー・オブ・ライフ」という名のマーティンD-45 DXを使い、「DADGAD」(ダドガド)と呼ばれる変則チューニングにして弾いています(3月4日)。
ギター(のコード)を聴いていると、物凄く複雑で難しいことをやっているように聞こえる筈です。実際にも難しいことをやってはいるのですが、それよりも遙かに難しく聞こえるのはその変則チューニング故のものです。聴き続けて行くと不思議なサウンドでありながらも何とも心地良いものになっているとお気づきになることでしょう。
Tin Whistleと呼ばれる小さな縦笛を旭孝さんに、チェロを堀沢真己さんに、ハープを朝川朋之さんにお願いしました。
歌入れは4月5日。そしてミックス・ダウンは4月24、26日。

コメント

八野さま
こんばんは。
有り難うございます!
実は前日のブログのタイトルからしていよいよ書いていただけるのかなと“予感”していたんです。ライナーノーツと双璧をなす音楽プロデューサーが語る「予感」の秘話や狙いについての連載がいよいよ始まり、まさに踊躍歓喜の境地です。今回レコーディングの具体的日付まで記してあり、作業の進行がありありと浮かんできます。全曲読ませていただいてから大変厚かましいですがコメント参加させてください。

まっちゃんさん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

是非コメントをお願いします。

もう既に全曲分書いているのですが、毎日少しずつアップして行こうと思っています。

八野さん、こんばんは。
詳細な解説、ありがとうございます。
私なりの偏った感想を書き込んで良いでしょうか…。
「片恋」
このアルバムの中でもっとも心に染みる作品です。トゥリー・オブ・ライフのサウンドはもちろんですが、さださんの演奏も素晴らしく、やさしくせつせつと歌いかけるボーカルと見事にフィットしていて…。カポ3、4あたりのポジションで、ギターの印象的なアルペジオで聴かせる曲って大好きな曲が多いです。「前夜」「空缶と白鷺」「理不尽」「聖域」「Pineapple Hill」「リンドバーグの墓」…ギターのそのポジションの音域とテンションの加減からかもしれませんが、心に沁みる弾き語り風の作品…そしてこの「片恋」もギターを抱えながら口ずさむ歌のひとつになりました。
「その橋を渡る時」
Rain Songの低音弦の刻みがとても心地よく、これはD-45ではなく、まさにJZ1000だからこそのサウンドでないと出せませんね。松原さんのブルージーなリードも秀逸。松原さんによるバラード曲のエンディングでのなきのエレキは大好きですが、こういうリードも雰囲気抜群に表現できるところが凄いところですね。さすがはプロ。ところで私はこの曲の歌詞にこめられた人生観に共感します。自らにこう信じながら、今をそして明日を向いて歩いて行きたいと。
「何もなかった」
先のコメントでも触れたのですが、なるほどDADGADでしたか。変則チューニングだからこその響きは新鮮ですね。開放弦の響きの中で高音域から低音域へとフレーズを動かすプレイ。いやあさすがです。間奏のさださんの演奏は実に美しく、しかし流れるように自然なフレーズとして耳に馴染みます。音の1粒1粒にムラがなく確実に奏でられるさださんの演奏の巧みさに感服です。そのギターの響きがハープの音とよく馴染んでいて、チェロがサウンドをより深いものするのに奏功していますね。ここまで聴いてきて、本当に今回のアルバムがギターをメインにしたアレンジになっていることを実感した私です。

八野さん、お久しぶりでございます。
私、ちょっと遅くなってしまいましたが、第一印象を書かせていただこうと思います。
実は、曲はこれから聴くところなのですが、
今回の新しいアルバム「予感」、まず、見た目があまりに綺麗で、
どうしても、この印象が新しく鮮やかなうちに、感想を申し上げたいと思いました。
音楽プロデューサーさんの八野さんに、もし見当違いだったとしたなら、すみません。

「予感」・・・なんと美しい絵でしょう・・・
また、今回ほど色彩的に凝った作りのアルバムもなかったのではないでしょうか?

手にしてまず、おぐらひろかずさんの淡いピンクのひろがりに心が洗われました。
CDを取り出せば、そこには桜の木に寄りかかる女性と、傍らのベンチに座る男性の図、
東武百貨店の、さだまさし博覧会でもこの絵が飾られていましたが、
手の届かないぐらい遠い位置にあり、細かく見ることが難しかったので、
この拡大は嬉しく、ありがたく、じっと魅入ってしまいました。

そして、裏面の曲名、曲順の数字のとりどりの色に心惹かれずにいられません。
見れば、そこここ全て、それぞれの曲目とそのページの地色が、それで統一されています。
なんと美しいパステルカラーの冊子でしょう。
手にした感じも多少重みがずしり、掌に厚み、温か味が感じられます。
ぺらぺらではない、しっかりとした本、といった印象、
この淡い色味だからこそ、中の白黒写真とお互い、とてもよく引き立て合っています。

きっとこの色にも意味があるのではないかしら・・・という私の「予感」は的中、
色はそれぞれの曲の中の言葉から選ばれたものなのですね。

 1、  片恋         蒼空の色
 2、  その橋を渡る時  水の色
 3、  何もなかった    紅い花の色(私にはポピーに見えました)
 4、  つくだ煮の小魚   あめ色
 5、  思い出暮らし    セピア色
 6、  冬薔薇         ベビーピンク色
 7、  私は犬に叱られた  桃太郎さんの桃の色
 8、  茨にもきっと花咲く  若緑色
 9、  静夜思         銀色(しろがねいろ)
10、 予感           朝焼けの光の色

最初と最後のページのグラデーションも淡く美しくはんなり・・
手にして、ページを繰る、それだけで幸せたちが、ひらりひらひら、舞ってくるようです。

色は、ひといろ、ひといろ、それぞれに美しいけれど、 
取り出してしまって一色になってしまうより、
みんなが合わさって「ひとかたまり」になっている時、 
更に引き立てあって美しさを増すように思えます。
本当に、こんなに美しい冊子をいただき、ありがとうございました。

私はこれから曲を味わうところなのですが、曲を聴く前、 
まずは視覚の面からも、こんなにも幸せをいただける装丁には 
心から敬服、感謝を申し上げたいと思いました。

では、曲をこれからじっくりと味わわせていただきます。

Jun.さん、凛さん、おはようございます。
コメントありがとうございました。

Jun.さん
詳細なご感想、ありがとうございました。
音楽的に突っ込んで聴いてらっしゃいますね!
喜んで戴けましたようで、何よりです。

凛さん
いきさつは本日のブログに書きました。
喜んで戴けましたようで、何よりです。
ビジュアル・スタッフにも感謝しています。

八野行恭さま

今回も、実に丁寧にお話しをいただき、ありがとうございました。
みなさまに影響を受け、私もコメントを入れさせていただこうと思います。
いずれあくまで私の勝手な思い込み、妄想、空想ですので、
どうかお気を悪くなさらないでいただければと願っております。

“片恋”
この曲を初めて聴いた時の鮮烈な強い第一印象は、これからも永く忘れることはないでしょう。
東京厚生年金会館での初演、コンサートのアンコールとして、まさかの新曲“片恋”初披露、「こんなに恋しくても、届かない心がある・・・」誰もが思い当たる切ない経験を、こんなシンプルに凝縮した素敵な言葉、優しい旋律にうっとりしながら聴き入るや、「嗚呼~」・・・胸がじ~ん、熱くなる・・・そう思ったところが・・・
「あ~なたに届け」と繋がったではありませんか!
その甘い衝撃!胸がぎゅーっ! 締め付けられ、涙一気に溢れました。なんと素晴らしい歌だろう・・・初めて聴いた気がしないぐらいだった、あの強烈素敵なインパクト、聴いても聴いても薄れることがありません。
これぞ、さだまさし真骨頂!彼ならでは、の素晴らしい世界だと思います。

このアルバムでは、サビ前の、「叫んでいる」「夢がある」の部分、歌詞にはない、「よ」、が、ありやなしや、聞きとれるかどうか、ぐらいの微妙な中継ぎ音として、「あ~なた・・・」へと繋がって、
「叫んでいる(夢がある)ぅょぁあ~なた・・・」、という風に歌われているように聞こえます、
この心憎さには・・・まいった、まいった・・・、すっかりやられました。
また、切々とした心情は、「恋しくって」「悲しくって」と、小さな「つ」を入れることでも、更に強調されているように感じます。

サイドギターのつまびきはとても美しく、リードギターの抑え目加減な音色と、チェロの伴奏とが、大人の切なさをもたらしてくれるような気がしました。シンプルなだけに、尚更心に響くのかも知れません。

「恋愛」、「人の想い」は基本「片恋」という八野さんのご意見、
はい、私もそう思います、全くもっておっしゃるとおり、深く、深く同感するものです。

“その橋を渡る時”
男らしく骨太な一曲、という印象。
「Rubicon River」と歌った後の、ため息とも、「頑張れ、俺!」、追い立てる声ともとれる効果音が心に残ります。
誰にとっても、生きていく上での大事な心意気がスカッと歌い上げられている、
かっこいい応援歌!

“何もなかった”
ぼやけた霧の向こうにある何かを探す旅へと、いざなわれるようなイントロ、
“ひとりぼっちのダービー”の広々とした砂丘が目の前に広がる気分、
或いは、S&Gの“ボクサー”から“Scarborough Fair”、或いはまた、“片おしどり”の老婦人が浮かぶような不思議な風景、ソフトな語り口調が終始耳元で囁かれるように、呟かれるように歌われる柔らかな調子・・・
それをこわさぬよう、「誰も知らない」は、「たれもしらない」と濁音をさける、という工夫がされているのも、さすがであると感じ入りました。

凛さん、おはようございます。
詳細なコメントありがとうございました。

“何もなかった”のギターは、そのベース部分が移動ドでいうと「ド、ソ、ド、ソ」と動いているので、確かにS&Gの「ボクサー」を連想させると思います。

“片恋”も“その橋を渡る時”も、何度もレコーディングを繰り返した曲ですので、きっと随所にその成果が現れていると思います。

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