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2011年05月20日

ヘビーローテーション

もうずっと休みなくスタジオにこもりっぱなしで、家には僅かな睡眠を取るために帰っています。
電車の中では愛用のiPod touchで3つのアルバムをヘビーローテーション。
1枚は先に書いたポール・サイモンの「 ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット」。あと2枚は白鳥座の「白鳥座」と「DENEB」です。

白鳥座の2枚は僕が20代の作品ですが、音楽上のアイデア・工夫、レコーディング上のアイデア・工夫を全て盛り込んだものでした。
今回のリマスターはマスタリング・エンジニア鈴江真智子さんのお陰で理想的なサウンドに出来ましたので、ノスタルジックでありながらもアグレッシブなものになりました。

まさしの最新アルバムのレコーディングは現場的にはトラブルの連続。こんなにトラブルに見舞われたアルバムは過去にはありませんでした。
7月6日が発売予定日ですが・・・・

2011年05月12日

“望むもの”と“望まれるもの”

この4月20日に5年ぶりにポール・サイモンの新作がリリースされました。
発売日に購入し、まさしに渡しました(勿論、僕も聴きました)。
http://www.amazon.co.jp/ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット-ポール・サイモン/dp/B004LPHVRK

個人的には1975年に発表された「時の流れに」はポール・サイモンの最高傑作だと思うし、グラミー賞の最優秀アルバム賞3度目に輝いた1987年発表の「グレイスランド」も素晴らしい出来だと思っています。
ただその後の彼は迷走していると個人的には感じてきました(勿論、それなりに素晴らしいアルバムは発表し続けては来ましたが)。
おそらくまさしや僕らCDを制作し続けている側が抱いている不安と恐怖をポール・サイモンも共有していると常々思っていました。

音楽を制作する側、特にポップスの場合は、新しいこと、誰もやったことがないことをやろうとすることが、創作・制作への原動力になっていることは紛れもない事実です。これこそが“望むもの”であり、リスナーの方々から“望まれるもの”とは直接関係はありません。
例えば「精霊流し」のような曲を作ることは、創作上の気持ちの上では退化につながります。「秋桜」のようなものも、「風に立つライオン」のようなものであっても、です。この「〜のようなもの」が「くせもの」なんです。
“望むもの”と“望まれるもの”との間に立つことも僕の仕事のひとつではありますが、見方を変えれば(他人の作った作品を聴くという面からは)まさしや僕はリスナーでもあります。

ポール・サイモンの音楽の特徴は一見正反対のベクトルを持ったものが混在することにあると思います。メロディックなもの、リズミックなもの、バロックのようなもの、現代音楽のようなもの、民象音楽のようなものなど、彼の音楽の多様性には驚くばかりで、しかも決してひとつのところに留まるようなことはありません。常に音楽的に裏切り続けること(同じようなものを作らないこと)が彼の信条なのかもしれませんが、リスナーとしては残念に思うことも無くはありませんでした。
というのは、まさしも僕も彼の最大の美点はウェットさであったり、儚さであったり、叙情性と哲学性の融合とそのバランスであったり、美しさであったり、と認識しているからです。僕らは(勿論、個人的にです)近年のポール・サイモンはリズミックな方向に行き過ぎていると感じてきました。
そして先日ニュー・アルバム「ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット」が登場しました。相変わらず新しいことに挑戦しながらも、彼の美点が近年以上に詰め込まれています。
とまぁ、こんな風にバックグラウンドをそれぞれの胸に秘めながら、ポール・サイモンのニュー・アルバムのことを、今年の1月以来続いているレコーディングの合間にまさしと語り合いました。

7月6日発売予定のまさしのニュー・アルバム「Sada City」はリスナーの方々からはどのように評価されますでしょうか・・・。
一昨日でオケは全て終わりました。今後、作品の煮詰め、歌入れ、エディット、ミックス・ダウン、マスタリングを経て完成へと導かれます。
これから3週間ほど、まさし、僕、エンジニアたちの共同作業が続きます。

2011年05月11日

影響を受けたCD その124

ベルリオーズ/幻想交響曲
デトロイト交響楽団/指揮:ポール・パレー
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1479290

個人的にベートーヴェンの“第9”とベルリオーズの“幻想交響曲”が大好きで、様々な演奏を聴きこんで来ました。幻想交響曲のCDで世評が高いのは「ミュンシュとパリ管」のものですが、高校生の時から一番数多く聴いたのは上記のポール・パレーとデトロイト響によるもので、“マーキュリー・リビング・プレゼンス”シリーズの中の1枚です。
非常にテンションが高い演奏ですが、決して完成度にも欠けてはいない名演だと思います。

“マーキュリー・リビング・プレゼンス”シリーズはレコーディング・ディレクター(プロデューサー)のウィルマ・コザート女史、エンジニアのロバート・ファインによって推し進められました。現代の耳で聴いてもそのリアリティ溢れる録音の素晴らしさは特筆ものです。
尚、上記のURLはハイブリッド・スーパー・オーディオCDですので、SACDプレーヤーで音質上の本領を発揮しますが、普通のCDプレヤーでもかなりの高音質を楽しむことが出来ると思います。

2011年05月10日

影響を受けたCD その123

ブラームス/交響曲第1番ハ短調
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2636392

この曲をカラヤンが振ったCDは多いのですが(しかもその全てが名演でしょう)、僕が一番聴いた回数が多いのがウィーン・フィルとのこのCD。
思えば“ブラ1”を最初に聴いたのはカラヤンとフィルハーモニア管弦楽団が演奏した疑似ステレオのLPでした。1950年代のその覇気ある演奏は、その後の僕の“物差し”のひとつになっていて、どうしてもベートーヴェンやブラームスの演奏には“覇気”が無いと気が済まなくなってしまいました。
現代の耳からすれば、1950年代のモノラル(あるいは疑似ステレオ)の音質では辛いものがありますので、必然的に上記のウィーン・フィルとのデッカ盤を聴く回数が増える訳です。
この演奏も瑞々しさ、美しさ、そして覇気が同居した実に立派な演奏で、モノラルのEMI盤と比べると音質は飛躍的に優れています。
作品の持つ古典的な造型感とカラヤンのロマンティシズムの見事な両立が印象的なもので、第1楽章冒頭の集中力と凝縮感は尋常ではありません。何度聴いても打ちのめされてしまいます。第2楽章のオーボエ・ソロとヴァイオリン・ソロの儚さと美しさは“溜息もの”。最終楽章のベートーヴェン的な“暗黒から光明へ”の移り変わった“歓喜の歌”もすさまじく感動的なものです。
このCDも早晩廃盤になると思われますので、入手されるなら早い方が良いと思います。

2011年05月09日

影響を受けたCD その122

チャイコフスキー/3大バレエ組曲
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
http://www.hmv.co.jp/product/detail/901909

チャイコフスキーの3大バレエ組曲には名演が多いので、どれを挙げるか迷うところですが、高校生の頃から聴いているウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とカラヤンのものが自分にとっては随一のもの。
先のドヴォルザークの8番のところでも触れましたが、やはりウィーン・フィルとカラヤンのものは素晴らしく美しい。
後年のベルリン・フィルとのCDも素晴らしく感動的だけれども、このウィーン・フィルとのCDには、美しさばかりでなく“何物にも代え難い優美さ”があります。
巨匠への階段を登り始めた稀代の名指揮者へのウィーン・フィル側からのアプローチと“優れた自分の楽器”を欲したカリスマ指揮者のマッチングが悪かろうはずはありませんでした。
この組曲にはワルツが何曲も含まれていますが、ウィーン・フィルが演奏すると、普通の均等な3拍子ではなく、ウィンナ・ワルツのリズムになってしまうのはご愛敬でしょうか。
尚、このCDもデッカ・レーベルのものですので、録音がとても良く、立体感豊かな音場と溢れる情感で説得させられてしまい、大いなる感動を味わうことが出来ます。

2011年05月08日

影響を受けたCD その121

ラフマニノフ/交響曲第2番
ロンドン交響楽団/指揮:アンドレ・プレヴィン
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1314123

“美しい旋律の宝庫”と言われるラフマニノフの交響曲第2番。
この曲では定盤中の定盤、プレヴィンの3度目のものが素晴らしいと思いますし、入手し易いです。
プレヴィンのこの曲に対する思い入れは尋常ではないらしく、あの「この世で最も美しいメロディ」と言われる絶美の第3楽章では幾度となく泣かされてきました。メロディを吹くクラリネットといい、弦全体の表現といい、最大限の感動を味わわせてくれると思います。
まさにプレヴィンとロンドン交響楽団の“知情意”が揃った名演でしょう。

情感が細やかでありながらももう少しあっさり目を好む方には、クルト・ザンデルリングとフィルハーモニア管弦楽団の廉価盤がいいかもしれません。マスタリング・レベルは多少低いですが、癖のない音質で、音楽運びも実に安定していると思います。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/736263

昨年入手し、それ以来好んで聴いているのは、アイルランド国立交響楽団(指揮:アニシモフ)のもの。演奏も音もとても美しいです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/94983

2011年05月07日

影響を受けたCD その120

ドヴォルザーク/交響曲第8番
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3618505

ボヘミア的憂愁がある美しいメロディに満ちあふれたこの作品に名演は多いのですが、その中でも特にCDトレイに載せることが多いのはカラヤンとウィーン・フィルによるもの。ただし旧録音のデッカ盤の方です。
1950年代末から60年代にかけての飛ぶ鳥を落とす勢いのあったカラヤンを、しかも最良の音質で聴くことが出来るのはデッカ盤のCDだと思います。個人的にはカラヤンのデッカ盤は全て名演だと認識をしています。
壮年期のカラヤンの覇気とカリスマ性、ウィーン・フィルの美しい音色、そしてプロデューサーのジョン・カルショウらレコーディング・チームによるリアルで立体的な音響、これらが全て揃っているのがデッカ盤の特徴です。
今日の耳で聴いても、この50年も前の録音には驚かされます。
美の極致そのものです。
2010年にはエソテリックからSACD盤が発売され、極上の演奏と音質を楽しむことが出来るようになりました(残念ながら現在は生産完了)。

2011年05月06日

白鳥座/アルバム「DENEB」10.「道程」(みちのり)

1stアルバムの「ターミナル」に対応させるべく、アルバムの最終曲をこの「道程」にしました(こちらのメイン・ヴォーカルは玲子が務めました)。
ちなみに「ターミナル」にも「道のり」という歌詞が出てきます。
アルバムのラストを飾るこの曲をよりオーソドックスで、エバーグリーンなものにするためにアレンジを渡辺俊幸さんに依頼しました。
彼もそれによく応えてくださり、劇的で実に感動的なサウンドになっていると思います。

1980年代初頭スタジオ・ミュージシャンとして人気・実力共に絶頂にあったピアニストの羽田健太郎さんはご自分の活動に専念するべく(アルバム「白鳥座」にも参加してもらっています)、83年頃からはスタジオ・ミュージシャンとしての仕事は断っていました。1曲でも彼にピアノを弾いて欲しくて、頼み込んだ結果、快く引き受けてくださることになりました。そしてアルバムのラストを飾るこの「道程」でピアノ(生ピアノとエレクトリック・ピアノの両方)を弾いて頂くことにしました。
やはり彼のピアノは安定しており、その重量感、華やかさ、哀感も素晴らしいものがありました(勿論、当時お願いしていた他のピアニストの方々も素晴らしい方々ばかりですが)。時折現れるピアノのオブリガートに心を奪われ、エンディング・ラストのピアノのみの部分では涙を誘います。
ちなみにこの曲だけはエレクトリック・ピアノをノーマルなフェンダーの楽器でやってもらっています。ピュアで透明感のあるものよりも、もう少しくすんでいて懐かしさもあるサウンドを目指したためです。

数年前に上野の東京文化会館で羽田さんにお会いしました。その後しばらくして、残念なことに彼は鬼籍に入られたことをこのブログで書きました。こちらとの関わりの中で生まれた僕にとっての彼の演奏の代表格は、まさしの「黄昏迄」と白鳥座のこの「道程」です。
玲子のメイン・ヴォーカルも絶品で、後の彼女の活躍を想像させるようなものになりました。エンディング近くでは玲子も加わった、透明感があり重厚でもある全員のコーラス(渡辺さんにお願いしてカノンを意識したアレンジにして頂きました)を入れています。
これらも今回のリマスターでより感動的なものになったと思っています。

当時のレコーディング、ダビング、ミックス・ダウンで様々な方々に協力して頂き、今回のリマスターや初CD化でも沢山の方にお世話になりました。
愛情とご協力に感謝申し上げます。
どうもありがとうございました。

2011年05月05日

白鳥座/アルバム「DENEB」9. 「12月、そして雨」

1stアルバムの「心届かぬままに」と同様、メージャー・セブンス系コードを使った作品。勿論ここでもメイン・ヴォーカルはメグが担当。
メジャー・セブンス系のコードの特徴である透明感、哀感を、更には季節感までをも表現したくてアレンジを今剛さんに依頼しました。

この曲では、「女性の心情」、「目の前に繰り広げられる街の様子」、「男の心情」の3つが交互に見事に表現されており、それをメグの名唱が支えています。
この曲でも高比良の作詞家としての目が冴えており、空気感、季節感、色彩感を浮かび上がらせ、それによって主人公たちの心情描写をより素晴らしいものにすることを助けています。
歌詞の中に出てくるモノトーンの街の冬景色に対して「ポインセチアの赤」は特に印象的であり、この曲のキーワードのひとつでもあります
こういうコントラストは近年でもCMなどに使われる手法です。モノトーンの女性の唇だけが赤であったり・・・。
数ある高比良の名曲の中でも、楽曲としての完成度の高さはトップクラスだと思います。

今さんの名アレンジにより素晴らしいサウンドになりました。イントロのフレーズは物凄く複雑で難しいフレーズに聞こえますが、左手のポジションや弾き方が分かってしまうとそれほど難しいものではないことに気付きます。こういうフレーズはギタリストでないと思いつきません。流石です。
この曲でも今回のリマスターでより一層、空気感、透明感、季節感、哀感などが表現出来たと思います。

尚、後年この曲はチキガリによってカバーされました。チキガリでは本来のこの曲を活かし、3人でメイン・ヴォーカルをとることによって歌詞の上記の3つの要素を表現するようにしています。

2011年05月04日

白鳥座/アルバム「DENEB」8.「タイムアップ」

白鳥座の中では最もアップテンポでエレクトリックなイメージの曲かもしれないこの曲はメグのメイン・ヴォーカル。

様々な出来事は時と共に通り過ぎて行きます。時が状況を変え、人生すら変えて行きます。
この曲でも主人公の状況が変わり、やがてふたりの別れを時を迎えます。歌詞の最後はストップ・モーション。
物語のスピード感とサウンドのスピード感を一致させるべく、アレンジを安田裕美さんに依頼しました。
華やかさと哀感とが見事に重ね合ったメグのメイン・ヴォーカルも絶品です。
またメグと玲子のハモリはこの曲でもいい味を出していると思います。

Simmons(エレクトリック・ドラム)のサウンドは時として古さを感じたりしますが、今回のリマスターで時を超えた普遍的な音色に近づけることが出来たと思います。

白鳥座が現役だった頃はほとんどライヴでやらなかったように思いますが、ある程度このアルバムのサウンドを再現出来れば、最もステージ映えする曲のひとつになるかもしれません。
実際、先日(4/29)のライヴのオープニング曲になり、効果的でした。

2011年05月03日

白鳥座/アルバム「DENEB」7.「コスモス便り」

メグが作詞・作曲し、メイン・ヴォーカルも担当したバラード。
この柔らかで、ほっとするような、ゆったりした世界観をサウンドでも表現するべく、アレンジを渡辺俊幸さんに依頼しました。

メグはこの曲の他にも何曲か作っていましたが、彼女の人柄や個性が一番出ていたのがこの曲でした。やはり作者だけあって、この曲のヴォーカルは作品の魅力を最大限に引き出していると思います。

ダイノマイ・ピアノというエレクトリック・ピアノはこの曲でも大活躍しており、ピュアで素直な女性主人公像やその恋愛模様をも表現出来ていると思います。
この曲は白鳥座の作品の中で、ストーリーの着地という点からは最もハッピーでほっとする曲かもしれません。

レコーディング、ミックス・ダウンで、この曲の個性、魅力を最大限に増幅させようと様々な努力をしました。
そして今回の新たなリマスタリングの結果、更にメグの声が柔らかく、穏やかで、輝きに満ちていて、しかも限りない情感が溢れるようなものになったと思っています。

2011年05月02日

白鳥座/アルバム「DENEB」6.「鬼無里村から」

玲子がメイン・ヴォーカルを担当し、シングル曲にもした白鳥座を代表する曲のひとつ。メグの美しくも幻想的なオブリガートと全員の迫力あるコーラスが効果的だと思います。
総合プロデューサーであるまさしは白鳥座のデビュー前から、彼らには民謡調の曲を歌わせたいと望んでいました。それが実現したのがこの「鬼無里村から」です(まさしは「赤い鳥」の皆さんの「竹田の子守唄」のイメージがあったのかもしれません)。

高比良が地図を見ていて、「鬼無里」という文字に衝撃を受け、その地名の由来を調べ、実際に当地を見に行って書いた曲です。
これは曲調からいってステージと同じようなサウンドでレコーディングした方が良いと判断し、メンバー以外のアレンジャーは立ててはいません。
またこの曲に於いてもレコーディングだからこその裏技もありました。
この曲のKeyはAmで始まり、間奏からBmに転調します。ギターはローコードのAmで弾き始め、転調したところからバレーコードのBmを弾くのが普通です。ところがギターの鳴りを良くするためと同時に弾き易さをも求めて、間奏の頭からパンチ・インしました。つまり2フレットにカポタストを付けて、Amで弾き直したということです(これで結果的にBmで弾いたことになります)。
何だか「ずるい」と思われそうですが、このようにより良いものにするべく様々な可能性に挑戦し、テクニックを駆使して最上のものを作っていくのもレコーディングなのです。こういう風なアイデアを頭の中の引き出しに沢山持っていることも、僕ら制作スタッフにとっては大切なことです。
残念ながら全国的なヒット曲にこそなりませんでしたが、ご当地長野県での売り上げは1位でした。
今でも「白鳥座」と言えばこの曲を思い浮かべる方は多いかもしれません。

尚、このアルバムの大半のメイン・ヴォーカルはハワイでレコーディングしました。
CSN(クロスビー、スティルス&ナッシュ)も使っていたリゾート・スタジオでレコーディングしたのですが、ロビーが無く、コントロール・ルームは狭く、実作業は困難を極めました。
何せ歌っている人以外のメンバーのいる場所が無くて、息を凝らしてスタジオ内(歌っている人の横や後ろ)にいるしかなく、しかも犬や蛙の鳴き声、車や飛行機の音などもマイクに入ってしまいました。勿論そうなると、その部分はやり直しです。
そんなこんなで歌う方も録る方もテンションを維持するのが大変でした。しかしメンバーも僕らも今となってはいい思い出です。

2011年05月01日

白鳥座/アルバム「DENEB」5.「川風」

LPではA面のラストに収録されたメグが歌ったスロー・バラード。
これもアレンジを安田裕美さんに依頼しました。

最初に録ったベイシック・トラックが本来のコンセプトとは異なってしまって(その演奏も素晴らしいものでしたが、目指していたものとはイメージが少し異なりました)、後日、六本木に出来たばかりのセディックというスタジオでピアノを録り直しました。
そのスタジオには新品のピアノが収まっていたのですが、新しいだけになかなか楽器が鳴らなくて、マイク・セッティングやピアノのタッチに関して試行錯誤しながらのレコーディングになりました(お試し価格でスタジオを使えたのでそういうことが出来ました)。それらの試行錯誤の結果、歌中のニュアンス溢れるアルペジオを実現出来、エンディングでは輝くようなピアノの音で、日が傾いてきた頃の川面を表現することが出来ました。浜口茂外也さんによるパーカッションも川面の光をイメージしていて、サウンドに更なる美しさを加えています。

そしてこの曲でも高比良の歌詞は冴えています。
例えば冒頭の部分ですが、普通は「風は静かに 川面渡って 芦の穂を揺らしてゆくだけの午後」と書いてしまいそうです。ところが彼は「芦の穂を」ではなく「芦の穂影を」としています。そうすることにより、その日の天候とその時間をも分かりやすくし、詩的な表現にもなるようにしています。彼は当時、二子玉川に住んでいたので多摩川の河川敷をイメージしたのかもしれません。
そして「オニヤンマ 飛んで行く」ではなく、「オニヤンマ すべってく」にしたところも、オニヤンマの飛ぶ姿の特徴をよく表していてリアリティが増すと思います。流石です。
この詞曲の持つ「ゆったり感」や「青春の煌めき」と、この安田さんのアレンジや光り溢れるような演奏はベスト・マッチングしていると思います。
メグのヴォーカルも、この曲のゆったりした、柔らかな世界観を見事に表現した最高の名唱だと思いますし(特にクレッシェンド、デクレッシェンドをたったひとつの音の中で繊細に使い分けることで曲の世界観や愛情を表現してもらいましたので美しいことこの上ないものになったと思います)、今回のリマスターで全体の完成度が高まったとも思います。