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さだまさしアルバム「風の軌跡」上

「ふるさとの風」
この曲を作った経緯はアルバムのライナーノートにまさし本人が書いた通りで、原曲は2013年9月1日に出来上がりました。
それは曲サイズが10分を超えるものだったので、「風の軌跡」に収録するにあたりダウンサイズすることにし、まさし本人と話し合いの末、2013年に録ったデモを2015年4月27日にエディットして短くし最終的なサイズ(エディットしたデモの段階では5:30ほど)にまとめ、それを編曲者の渡辺俊幸さんに渡しました。

ベーシック・トラックの録音は5/6、弦などのダビングは5/8、ヴォーカルは歌入れ初日の5/9で、最初に録ったのがこの曲でした。
この日はまさしの声の調子がとても良かったので、何と4曲も歌入れが出来ました。1日に4曲も歌入れをするのはとても珍しいことです。
声出しを兼ねて数回通して歌った後、4テイク録り、5/11、12、14にエディットしてOKテイクを作り、5/16.17にミックス・ダウンを行いました。

これまでも(アルバムを制作する際)アルバム全体の統一感を計りながらも、1曲1曲の個性を出すようにしてきましたが、録り、エディット、ミックス・ダウンで個人的に一番こだわったのは、一番説得力があり、感動的でもあるテイク(歌)をセレクトすることは当然のことですが、声の響きとダイナミクスをいかにオケとマッチングさせるか、ということでした。
東日本大震災関連のことがテーマの曲ですので、まさしの声のあたたかい温もり、(聴いてくださる方全てを包み込むようなイメージで)優しさを増すようにすると共に、実際の音楽の音場感というだけでなく、普遍的でもあり、未来に向けて拡がって行くようなサウンドを作ることでした。

「みらいへ」
ジャパネットたかたさんのCMオン・エアーに間に合うように、曲作り、録音が行われました。曲作りとデモ録音は1/11、ベイシック・トラック録音及び弦などのダビングは1/25、歌入れを1/11.26、エディットを1/26.27.28にやり、ミックス・ダウンを1/30に。それでギリギリCMオン・エアーに間に合いました。
歌は6トラック録り、それをまとめてOKテイクを作り、ノイズをカットするなど細かいエディットをしました。

この曲のサビをお聴き頂くと、それ以外の部分と声の感じが異なるのにお気付きでしょうか?
実はエディットをやっている時にまさしから「サビの歌をダブルとかトリプルにして欲しい」と連絡があり、今回はいつもの方法とは異なることを敢えてやりました。
通常はOKテイクに別のトラックの歌をひとつ重ねるダブル、2つ重ねてトリプルという風にするのですが、今回は個人的にはもっとピュアな響きが欲しくて、OKテイクを4つコピーしてOKテイクが入ったトラックを4つ作り、その2つを大きくずらす、残りの2つを小さくずらすことで、合計5つの歌(声)にしています。それらの音像定位をも工夫することによって、拡がりがあるのに濁ってないピュアな響きになったと思います。
ジャパネットたかたさんのCMで使用された、まさし自身が選んだ当時ハイティーンだった方のピュアな瞳の美しさに感動したこともあって、このようにしました。

「ラストレター」
4/29に曲が出来上がり、デモを録りました(最後に出来上がった曲です)。
ベイシック・トラック録音は5/6、弦などのダビングは5/8、歌は5/9の2曲目、5/11.13.14にエディット、5/16の2曲目にミックス・ダウンをやりました。

曲全体のダイナミクスは「ふるさとの風」と共通するところがあり、柔らかいイメージを大切にして、歌も10テイク録った中から、表情の良さ、温かさ、優しさなどを優先してセレクトして細かいエディットをやって行きました。
この曲に限らず、柔らかく歌った曲は、バックの楽器のアタックや楽器の音の重なりによって、聞こえづらくなることがしばしばあります。
そういう場合、聞こえづらい歌詞のアタックのみをエディットでレベルを上げて行きます。例えば、「こ」が「お」に聞こえてしまう場合、その部分の歌の波形をMacのProToolsというソフト上で出して、「K」の部分のみのレベルを上げる訳です。
このようにして行くと、1曲のエディットは数時間から数日かかってしまうこともあります。
楽器でもこのようなことが出てくるので、演奏のエディットもやることになります。

そして特にこの曲で僕がこだわったのは空間処理、音場感でした。
この曲の「故郷を捨てた人の故郷を懐かしむ言葉が 深夜の空から降り注ぐ」という歌詞が僕を揺り動かし、イントロ、間奏、エンディングのピアノの音が「深夜の空から降り注ぐ」ようにしたいと思いました。エンディングのハミングもしかりです。エンジニアの鈴木智雄さんはそれによく応えてくださり、ノスタルジックで、美しくて、見事な音空間になっていると思います。

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