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さだまさしアルバム「風の軌跡」下

「風の宮」
まさしはかなり前から伊勢神宮を題材にした曲を作ることを考えていましたが、この曲でそれが実現しました。

曲が出来上がり、デモを録ったのが4/28、ベイシック・トラック録音を5/6、弦などのダビングを5/8、歌入れを5/9の3曲目、エディットを5/7.11.12.13.16、ミックス・ダウンを5/17.21にやりました。

こういうドラマティック・マイナー(僕の造語)は毎回、歌入れも、エディットも、ミックス・ダウンも困難極まるものになります。
歌は9テイク録りましたし、エディットは5日間、ミックス・ダウンも2回やりました。
ミックス・ダウンは間違いなくハンディキャップ1番になるだろうと、やる前から解っていました。

特にここまで楽器が多いアレンジになると、ミックス・ダウン時にフェーダーをわずか0.5mm動かしただけで、他の楽器や歌に影響を及ぼしてしまいます。
もうイタチごっこ繰り返しのようでした。
歌やオケの集中力、力感、拡がり、透明感、温度感などあらゆるものを疎かに出来ませんし、エディットやミックス・ダウンで更に良くすることが必須なので時間が足りませんし、集中力と体力の限界までやり続けました。

レコーディング中でも、制作スタッフ全員が共通のイメージを持つことは大切なことなので、イントロのアコースティック・ギター・ソロは「アル・ディメオラ登場!というイメージのバランスで」とエンジニアの鈴木智雄さんに話したら、渡辺俊幸さんが「そう、それがいいね!」と。
ミックス・バランスといい、質感といい、歴代のドラマティック・マイナーの中でも最も上手くいったと思います。

「夢見る人」
曲が出来上がってデモを録ったのが1/11、正式なレコーディング(歌入れ)のためにデモの歌を採譜し、デモやコード譜と一緒にアレンジャーの渡辺俊幸さんに送りました。
オケの録音は1/25、歌入れは2/12.19、エディットは2/20、ミックス・ダウンは2/22でした。

少しでも良い声、良い表情で歌を録ろうとして何度も何度もトライを繰り返し、ようやく2/19に満足出来る歌が録れて、まさしも僕も胸を撫で下ろしました。録った歌のテイクの数は何と15でした。
ですから、エディットも困難を極めました。選択肢が多いことは僕にとっても良いものを作り出す条件ではあるのですが、15テイクもあれば単純に普通の3倍の時間がかかります。
エディットの際、例えば1コーラス目の1行目を、1〜15テイクを順番に聴いて行きます。その中で出来の良い順番を付け、次の行に進みます。
1行の中でも、少しでも良い部分を他のテイクから探すのは勿論、客観的に良いと思うものがあっても、前後の流れの中では使えないテイクが出てくる可能性さえあります。

本当にこういうシャウトしないバラードは全てが難しいです。
例えば、力むと歌の表情が減りますし、弱過ぎると良い声には聞こえない。このバランスが何とも微妙なんです。
元々メロディ・ラインのイメージからは、柔らかく優しいものが連想されると思います。ですから、デモ録音の時から、本人には「柔らかく美しく歌ってください」とお願いして来ました。
僕にとって、上記のように相反するものをいかに上手く両立させるかということが、オケでも歌でもミックス・ダウンでも最大の課題でした(勿論、この曲だけではなく、全ての曲で、ですが)。
全てのバランスが整った歌、演奏、エディット、ミックス・ダウンがこのCDに収録されているものです。
サウンド的にも「TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場 天皇の料理番」の主題歌に相応しいものになったと思います。

「風に立つライオン(シネマ・ヴァージョン)」
1987年の春の夜のことでした。
深夜0時過ぎにまさしから僕の自宅に電話がありました。
「今、作っている曲が1コーラスだけ出来たから聴いて」と言われ、電話で聴かせてもらったのが「風に立つライオン」の1コーラス目でした。
聴かせてもらった後、僕は茫然自失。感動に打ち震え、涙を浮かべていました。
まさしは「(黙っちゃって)どうしたの?」 僕は「感動で泣いてました」と。
「自分では、ここの部分が気になるんだけど、どうかな?」とまさし。僕は「気になりませんし、それがある方がいいと思います」と。
「じゃぁ、これから2番の歌詞を作ってみるよ」とまさしは言い、電話が切れた。
10分後位にまた電話がかかってきた。
2コーラス目を聴かせてもらった。
「最高です。これから歌い継がれる曲になると思います。アルバムの目玉になりますね」と僕。

その日から27年以上の時が流れた。
その間のこの曲への評価は周知の通りです。
映画「風に立つライオン」のためにリテイクをすることになり、まさしと話して、シンフォニック・コンサートの時のスコアを使ってレコーディングすることにしました。
オケの録音は2014年12月28日、歌入れは12/29にやりましたが、歌い慣れている曲なので、1〜2回声出しで歌った後、録ったテイクは3つでした。
エンディングのコーラス録音を1/7、エディットを1/5.8.9、ミックス・ダウンを1/10にやりました。
録りもエディットもミックス・ダウンも全てが上手く行き、満足出来る仕上がりになりましたので、1987年の春の夜のこと、その時の感動を鮮明に思い出しました。
いつ聴いても、何度聴いても、それぞれの方が最初にこの曲を聴いた時の感動が甦るような、普遍的なものを目指しました。

この曲に限らず、今回も特にレコーディング・エンジニアの鈴木智雄さん、マスタリング・エンジニアの鈴江真智子さん、アシスタント・エンジニアの齋藤春樹さんに無理難題を言い放しだったかもしれませんが、皆さん素晴らしい仕事をしてくださいました。

<最後に>
今回も、さだまさし本人のいつもながらの頑張りには脱帽でしたし、最高の譜面を書いてくださったアレンジャーの渡辺俊幸さん、倉田信雄さん、最高の演奏を提供してくださった沢山のミュージシャンの皆さん、エンジニアの鈴木智雄さん、谷健太さん、齋藤春樹さん、島田枝里花さん、春 雅之さん、マスタリング・エンジニアの鈴江真智子さん、楽器テクニシャンの小松一英さん、ミュージシャンズ・コーディネーターの関谷典子さん、アキュフェーズさん、アコースティック・リヴァイヴの石黒謙さん他、数多くの皆さんの協力で目指していたものが出来上がりました。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

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